かあさんのいす --- ベラ B. ウィリアムズ/作、佐野洋子/訳
(これもおなじくレポートから。読んだのは、こっちの方がずっとずっと前でした。)
表紙のタイトル文字がタイル風なのは、「かあさん」が働いているお店の名前が「ブルータイル食堂」だからです。
女の子はこちらに背中を向けていて、窓越しに女の子に笑いかけているお母さんが見えます。
読者はこの瞬間から、主人公の女の子に自分を同化させるでしょう。
彼女にとっての、「かあさん」の存在のかけがえのなさを感じます。
しかし同時に、お母さんの姿は周りの環境の中にあり、けっして女の子の視界のすべてではないのです。
この女の子が、母親を心のよりどころにしつつも、母だけしか見えていない小さな子ではすでになく、自分を取り巻く社会をとらえていることが分かります。
店のブルーのファサードは、ハードで確固とした印象ですが、店の中は暖色が多くカラフルで、人物の表情も明るく、心をほっと温かくさせます。
この女の子が生きる状況の厳しさと、それとは対照的な内面(あるいは家庭)生活の温かさとを思わせます。
窓の下でスズメがなにかをついばんでいる様子も、小さく弱い者の姿であると同時に生き物の愛らしさと力強さを思わせます。
女の子らしい語り口の物語を読み進むにつれ、この子がお母さんとおばあさんと3人でつつましく暮らしていること、お互いを思いやる温かな家族であることが分かってきます。
すべてのページには場面にあった模様の外枠がついていて、女の子の多感な心を思わせます。
原書の方が女の子の口調の子どもらしさと、けなげさを良く伝えていると思います。
タイトルも、かあさんの“ための”いす、なのです。
*注:原題(A Chair for My Mother, 1982)


