ルリボシカミキリの青 --- 福岡伸一/著 文藝春秋 2010
福岡ハカセの、週刊文春掲載のエッセーを集めた本。
わたしは女の子だし(* ̄m ̄)昆虫は小さい頃よく遊んだけど
大人になったらいつのまにか触れなくなっていたクチですけどもっ
昆虫のビジュアルには魅了される。
っていうかあのデザイン!なんて完璧。なんという美。
本書は、タイトルはこれなんですけども
内容は昆虫の話ばかりではなくて、ハカセの偏愛の話
もとい
ハカセ目線での世界の解釈。
絵本の話から地球環境の話まで多岐にわたっていてとても面白かったわ。
この方、小さい頃に相当本を読んでいらっしゃるのがよーくわかりました
そうそう。
こんなタイムリーなくだりがありました
「福岡ハカセの尊敬する人物にマリス博士がいる。
彼はPCRというものを発明した。
遺伝子増幅反応。
現在、犯行現場で採取された髪の毛一本から犯人が突き止められたり、親子鑑定が厳密にできるようになったのはすべてPCRのおかげである。
(中略)
PCRは分子生物学に革命を起こし、何億ドルもの莫大なマーケットを開いた」
ほほほぅ。
今年に入ってから、毎日それこそ何十回も、聞かぬ日はないPCR検査。
このマーケットは今さぞかし……
そういえば
このコロナ禍がはじまってしばらくした、4月3日の朝日新聞に、
福岡ハカセが寄稿されていたのを思い出した。
遺伝情報は親から子へと垂直に伝わるもののほかに
ウィルスによって水平に伝わるものがある。というおはなしで
最後はこう結ばれていました。
「かくしてウィルスは私たち生命の不可避的な一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。
私たちはこれまでも、これからもウィルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない」
それにしてもこの方の文章は、読むたびに思うけど、ホントうまいですよねぇ...
文体が流麗で語彙の選択が絶妙で構成が知的。
特に、「少年ハカセの新種発見」て作品なんて、感動して泣きそうになったわ(でも泣いてない)
これ図書館で借りたやつだから、あとで思い出したいところをちまちまと、抜き書いておきます〜
身体に入ってきて症状を起こしたウィルスたちのことを、放蕩息子prodigal sonと。
「真実はいつも、とても小さな声でしか語られないということなのであり、それゆえそっと耳をすませなければならないということなのである。そしてその声を聞きとるために必要なのは、懐疑的なこころのあり方なのだ……」(「新学期の憂鬱」)
「中学だったか高校だったか、顔や名前すら忘れてしまったが、あるとき数学の先生が教えてくれた。
関数、関数って教科書に書いてあるけど、これはほんとうは函数と書くんですよ。
つまり函があってこっちから数を入れるともう一方からポンと別の数が出てくる。そういう仕組みが函数なんです。そうなんだ。それ以降、三角関数でも指数関数でも、関数が出てくるたびに私にはそれがちゃんと函に見えた」(「新学期の憂鬱」)
「こんな調査がある。一流と呼ばれる人々は、それがどんな分野であれ、例外なくある特殊な時間を共有している。幼少時を起点として、そのことだけに集中し専心したたゆまぬ努力をしている時間。それが少なくとも1万時間ある。
(中略。これは、獲得形質は遺伝しない、という流れの話)
そう思うと別の、ある事実が納得できる。
一国の主に限らず、議員でも会社でも芸能界でも、どんな組織にあってもいわゆる二世、三世はおしなべて、なぜ、かくも弱く、薄く、粘りがないのか。
それは外形だけは親から伝えられるものの、肝心の一万時間の内実が与えられていないからである」(「天才は遺伝するか?」)
抗生物質を発見した研究者でのちに環境思想家となった…と紹介されているルネ・デュボスの言葉。
"Think globally, act locally."(「霧にかすむサミット」)
それにしても、文春の読者はこれ和訳要らないのかしら?
(胎児の時期に)「するとどうなるか。ランダムに敷き詰められていたおはじき=免疫細胞 中、自分と反応したものは消え、そこが空白となる。おはじきの様子を少し遠くから眺めてみると、抜け落ちた空間がある。それが免疫システムが規定する自己というものなのだ。
つまり自己は無であり、空疎なものなのだ」(「花粉症から見える自己」)
あぁそれからね、
マザーグースを大学の授業で読んだ、っていうくだり(はじめはご不満だったようですが)
(「語りかけるべきこと」)
中学時代マザーグースLOVEだったわたしは、なんか嬉しかったな。うふ。
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