2018年07月22日

「競馬の動物学 ホース・ウォッチング」


競馬の動物学 ホース・ウォッチング --- デズモンド・モリス/著 渡辺政隆/訳 平凡社 1989

丁度都井岬を訪れた前後に読んでいたんですけど…
前後と言っても、だいぶ前から始めてだいぶ後までデスガ……

こんなに時間がかかったのは、最初の方がおもしろくって後になると徐々に読む気が続かなくなったところもあったりしたからかも
でございます

ともあれ

デズモンド・モリスと言えば著名な行動学者で、
中でも名著「マン・ウォッチング」は
大学時代のわたしたち比較行動学研究室の学生(の、なかでも人間を研究していた人たち)にとってはバイブルみたいなものでした
私は、ニホンザルだったから、「アニマル・ウオッチング」くらいは読んだのでは…
(でももうサッパリ覚えていない。お名前しか覚えていない。とほほ)

で、このお方の
「ホース・ウォッチング」がこの本。
特に競馬に特化して書いてあるわけじゃぁないんだけど(競馬の項もありますが)
生活に馬がいなくて、馬といえば競馬、っていうのが日本だから、まぁこれはしょうがないのかなー

馬はどういう動物なのか、っていうことが
生理学とか解剖学とかの視点からではなくて、主にその行動から、
あとちょっとは人間との歴史と文化の観点から、
書かれている本です

おもしろかったところは…

まず、馬の個体識別システムだという「においかぎ」について。
「社会的な関係を確立しようとして、二頭は相手のにおいをたんねんにかぎ合う。
それも特に、相手の息のにおいをよくかごうとする。
互いに近づいて、鼻づらと鼻面をつき合わせてそれをやるのである。
そして、どちらか一頭が相手の鼻孔に『名刺』代わりに息を吹き込む。
すると敏感な鼻腔の中でその『名刺』が読み取られ、記憶されるのである。
それが終わるともう一方も同じことを繰り返す。
そうやって互いに自分を尊重するよう申し込み、…」


これ、乗馬クラブでも数頭の馬とかかわっていたら、
やってくれる馬がいます。っていうか鼻の横でこんな風に「フーンッ!!」って何度かされた気がする。わたしは人間だけども。

そうかぁ。

人に飼われている馬は、一日のほとんどを馬房で過ごしているけれど
まぁうちのクラブのお馬さんたちには常同行動のようなものはおそらく見たことがないんだけれど
やっぱりさく癖(空気をのみこんじゃう癖。ぐいっぽと呼んでいます)とかはある馬がいるわけで

これもこの本によると、要するに、馬たちの元々の活動特性が制限されているために起こっているもののようで…
「ウマは、一日当たり少なくとも12時間、場合によっては16時間という
遺伝的に組み込まれた『食事時間』を持っているからである。
ウマたちは、適切な量の食物が食べられたかどうかに関係なく、その時間を摂食活動にあてたいと欲している。
あっというまに平らげられる高栄養食料を与えることは、その基本特性に反している。
ウマは、低栄養食料に特殊化した動物なのである。
ウマは、たくさんの繊維を含んだ低栄養の食物を食べて過ごすようにプログラムされており、
誰にもそれを変えることはできない。
そのせいで、何も食べるものがないのにものを食べるしぐさをしたり、
飼葉桶をかじったり、厩舎の木戸をかじったり、空気を飲み込んで胃を膨らませて空腹感をまぎらわせたり、
糞を食べることで少なくとも食物の多様性を増やそうとするようになるのである」


(注:幼い仔馬の糞食にはまた別の意味…お母さんから腸内細菌をもらうんだったかな…があるみたいです)

ほほー!
困ったことのように言われているけど、もともとの生態と離れてしまっている飼い馬くんたちの、
現実適応の姿のひとつだったのね。

これ、都井岬で御崎馬を見ていると、ほんとにすっと腑に落ちます。
彼らは、ずーっとずーっとずーっと…寝ているとき(これも立ちながら)以外… 首を下にさげてもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐしていたもの。


「愛情をどのように示し合うか」という項に書かれていたのは

「であるからして、騎乗者は、そのウマの『毛づくろい相手』でもあったほうがよい。
そすれば、両者の感情的なきずなが深まるし、そのウマは、一緒に出かける際にはその騎乗者を喜んで騎乗させるはずである。

(中略)
念入りなブラッシングのほかにも、ウマとの友情を深めるために人間が利用できるウマ本来の行動がある。
初めて合った(←注:本文のまま)ウマに対しては、ウマどうしが行う相互毛づくろいの開始動作に近いことをやれば、
そのウマの猜疑心や恐怖心をやわらげることができるのだ。
ウマへのあいさつとしていちばんいいのは、最初に近づいたときにまずウマの鼻孔のにおいをかぎ、そのあとでたてがみを指ですいてやることである。
たてがみをすく際には、ウマが歯でかむように、指でつまみながらすいてやるのがいい。
指でつまみながらたてがみをすいてやるという行為は、自分はお前と仲よくしたいんだというウマに対するメッセージとなる」


この文は、ただし、こう続いています…
「ただ、このやり方には欠点が一つだけある。
ときにメッセージが通じすぎて、相手のウマがかみ返してくることがあるのだ。
首をせいいっぱいねじ曲げて、相手の丁重なあいさつへのお返しのつもりで熱心な毛づくろいを始めかねないのである。
そうなれば、そのとき着ていた服の惨状や思い知るべしである」

(* ̄m ̄)

紹介しておいてなんですが、こんな服の心配以外にも
お馬さんによっては、頭を急にブンっと振る癖のある子がいるので…
慣れた子でもこれは注意しないといけないし(当たり前ですが馬の力半端ないですワ まともにくらったら、人間の鼻の骨とか折れるかも)
見知らぬ馬とかでは噛む子もいるよねたぶん。
だから
初めて出会った、知らない馬に急に顔を近づけるのは、私は決してお勧めしないっていうかやめた方がいいと思いますが。
本にそう書いてあったからと言って、自分の五感と本能と理性をフルに使わずに自然(この場合馬)に接するのはやっぱり危険ですよね。

ともあれ

大好きな人のことはもっともっと知りたいと思うじゃぁないですか

その欲求にこたえてくれるとともに
ウマへの敬意をいやおうなしに高めてくれる本です

posted by しろくま at 13:54| Comment(0) | こんなん読みました^^
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: