アイヌ、神々と生きる人々 --- 藤村久和/著 小学館ライブラリー 1995
(初出は1985 福武書店より)
アイヌの文献はいろいろ(と言ってもそう多くないけど…)手を出していて
実は今並行してもう一冊読んでいますが
これはダントツに面白くって読みやすい。
学者目線じゃないっていうのかなぁ
著者は、(あとがきで梅原猛さんが紹介していますが)
アイヌの方々の中に飛び込んでいって、古老とちゃんと仲良くなって、
アイヌの伝承を聞くだけじゃなくって、学んで身につけていった方のようで
梅原先生曰く
「一段高いところからアイヌを研究する学者たちとは全く異なった研究の仕方である」
それはこの本を読んでいると
丁寧さとあたたかさがしみじみ伝わってきてよくわかるような気がします
アイヌの昔話や伝説は面白いんですよね
おもしろいし、あととても個性的。
その個性を生み出す元を知りたくってこういう本を読んでいるようなものですが
やはりとても魅力的です
子どもの育て方や能力の伸ばし方などもねぇ
なるほどですねぇ
学ぶところがとても多いって思いました
いろいろ面白かったのですけどとくに
憑き神のところが心に残りました
前に「人間以外はすべて神(カムイ)みたいよ?」って書きましたけど
どうもそれは若干正確ではなくって
(アイヌの世界観では、って簡単に言うとですけど)この世には
アイヌ(人間)と
神(カムイ、人間が素手で立ち向かえないもの、特殊な能力を持っているもの)と
どちらでもないもの(人間の能力より劣るもの、つまり人間が作ったようなもの)
の3種類のグループがあるようなんです
(とはいえ、お茶碗のようなものだって人間の役に立っているわけだし、
それぞれ霊が宿っているものと考えるから、
掛けたり割れたりして使えなくなったらきちんと「霊送り」のような儀式をして、
無碍に捨てたりはしないんですよね)
だからカムイとは呼ばないまでも、全ての物に霊が宿っているって
考えて生活しているわけですよね
これは実にすごいことじゃぁないですか
(でも、こんまりさんの「かたづけ術」を思い出したりもする)
あぁそれで、なかなか本題に入れないんですけど
おもしろいなぁと思ったのは
一人一人に、生まれたときから、憑き神様が一つか二つ、ついていると考えるそうなんですね
赤ちゃんが育ってくると、憑き神も一緒に育ってきて、
だんだんその子の特徴としてあらわれてくるんだそうです
「三歳から少し先になると、なんとなく子供のしぐさなどに特徴が出てくる。
それで親はその子の憑き神を見つける。
ああ、この子にはこういうくせがあるから、この子にはこんな神様が憑いているのだろう、ということになる。
その憑神を親が全然見つけることができなければ、これは親の能力をはるかに上回る強い神様が憑いていることになる」
だからそのような子どもの場合は、もっとわかる人、霊力の高い人に見てもらったりするのだそうです。
そして人は、その神とともに生きて、力をもらったりもし
大事にしたりもし
自分自身の中に複数の視点をもって生きていくわけですよね
実にすごくないですか
↑のようすを、ちょっと考えても
子どもを実によく観察しているし
(これは「育児、しつけ」の項にもよく説明されています)
自分だけの力で生きていると考えていないでしょう
自分の(たとえば上述の親の)能力を超えたところ、限界をきちんと意識していることになる。
そうそうアイヌの憑き神さんですが
個人のとは別に家系の守り神などもあるようです
アメリカン・インディアンのtotemとも似てるかな
そういえば
夏休みに来てたベルギーのボーイスカウトの子たちが
ベルギーでは(日本でも班に動物の名前を付けるけれども)
スカウト個々人にtotemがあるって言ってました
二人ともそれぞれ、ぼくのはmustang、なんとかいうイルカの一種
って誇らしげに教えてくれたっけ
アイヌの方々の世界観はなんと多彩で豊かなんだろうね
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